タイでそれなりに暮らすには健康であることがかなり重要、という話

タイと聞くと、多くの人が「物価が安い」「暖かい」「暮らしやすい」といったイメージを持たれて、リタイア後の移住などを考えている人も多いと思います。

たしかに、日本に比べれば家賃や食費などは比較的安く抑えることもできます。

しかし、タイで「それなりに快適に」暮らすためには、実は想像以上に健康であることが重要です。その最大の理由の一つが、医療費の高さにあります。

タイにはバンコクを中心に、世界的にも有名な私立病院がたくさんあります。バムルンラード病院やサミティヴェート病院などは、日本語対応が可能な医療スタッフも多く、設備も最新鋭。診断や治療の質も高く、外国人でも安心して受診できます。しかし、その反面、医療費は非常に高額です。場合によっては日本より高いと感じることさえあります。

例えば、バンコクの私立病院で風邪をひいて診察を受け、血液検査をして薬をもらっただけで、1回あたり5,000〜10,000バーツ(約2〜4万円)かかることは珍しくありません。もしも入院となれば、さらに高額な費用が発生し、治療内容によっては数十万バーツ(数十万円)単位になることもあります。特に、心臓病やガンなどの大病にかかってしまった場合、医療費だけで生活資金が一気に圧迫されるリスクがあるのです。

ここで、私自身の体験談をお話しします。

バンコクに来てからもともとあった子宮筋腫が大きくなったことで、貧血などの症状が出て通院が必要になりました。ホルモン治療等で経過を見ていたのですが、結局手術を勧められる大きさにまでなってしまいました。(ホルモン剤も1ヶ月で5,000バーツ以上の費用がかかっていました。)病院はネットで色々調べてサミティベート病院を選び、安心して手術に臨めたのですが、かかった入院(4泊)&手術費用はなんと約30万バーツ(当時のレートで約120万円以上)。しかも術前検査、術後のフォローアップは別でした。

正直なところ、想像をはるかに超える金額でした。もちろん、医療レベルやサービスの質は申し分なかったものの、これほど高額になるとは思っていなかったため、かなりの衝撃を受けました。

ちなみに、私の場合は勤務先の会社がしっかりとした医療保険に入ってくれていたため、かなりの部分をカバーできましたが、もし保険が無かったら、大変なことになっていたと思います(タイにいられない・・・)。タイで「もしもの時」に備えて、医療保険に加入しておくことがどれだけ大切かを、身をもって実感しました。

もちろん、タイにも公立病院やローカルクリニックはあり、そちらは比較的安価です。しかし、待ち時間が非常に長かったり、言葉の壁(英語すら通じにくい場合も)といったハードルがあり、緊急時に十分な医療を受けられるとは限りません。また、タイの医療システムに慣れていないと、どの病院に行くべきかすら判断が難しい場面もあるかと思います。

このような現実を考えると、タイでの生活では「とにかく病気や怪我をしない」ことが、思った以上に重要になってきます。特に持病がある方や高齢者は、渡航前にしっかりと健康管理をしておくべきですし、現地でも食生活に気をつけ、定期的な運動や健康診断を欠かさないことが大切です。

また、海外旅行保険や現地の医療保険に加入しておくことも必須です。タイには外国人向けの医療保険商品も数多く存在していますが、加入時の年齢制限や持病により加入ができないなどのハードルなどがあるため、事前によく調べる必要があります。保険料も医療費のインフレが進み、年々高くなっている傾向がありますが、それでも高額な医療費を考えれば、保険は「安心料」として必要不可欠です。

さらに、タイでは交通事故とくにバイク事故が非常に多いことも有名です。バイクタクシー「バイタク」は安くて便利な移動手段の1つですが、交通マナーは日本とはかなり異なり、バイクに乗る人は特に大怪我を負うリスクが高いです。バイクに乗る場合は必ずヘルメットを着用し、できればバイクではなく公共交通機関を利用する方が無難です。

タイは確かに「住みやすい国」ではありますが、それはあくまで「健康でいられる」ことが前提です。医療費の高さ、交通事故のリスク、さらにはPM2.5といった大気汚染のリスクなど──これらを理解した上で、日々の体調管理と安全対策を怠らないことが、タイで快適に暮らすための鍵になります。

「病気になったら考えよう」では遅いかもしれません。 タイ移住や長期滞在を考えている方は、ぜひ健康を最大の資産だと考えて、準備を進めてもらえたらと思います。